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2007年07月

2007年07月27日 【レポート

ドイツ研修 Vol.2 ドイツラボ見学編

マイスタースクール見学の後にラボの見学に行ってきました。

今回、見学させていただいたのは大畠氏がドイツ在住中に在籍されていたドュッセルドルフの街中にある”Dental studio Rolf Herrmann”とマイスタースクール時代のご学友であり現在は姉妹ラボとして提携しておられる”DENTHETIK LINGWEILER”の2件ラボでした。

まず1件目のRolf Herrmann氏が経営する”Dental studio Rolf Herrmann”を伺いました。
Herrmann氏のラボはデュッセルドルフ市内でも高級ブランドショッピングモールやレストランなどが立ち並ぶ繁華街の近くの趣のあるビルの中にあり、ラボの名前の入ったドアは、白い外枠に室内が覗える広いガラス板に赤色がとても鮮やかでラボ室内に入る前からそのセンスの良さがうかえた。


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”Dental studio Rolf Herrmann”近くの町並みの景色   ラボが入っている建物

ラボの入り口を進むとそこには、デザイン事務所かと思うくらい鮮やかで広い空間が目の前に飛び出してきました。入り口近くにの中2階には、外部とラボ内部をつなぐ司令塔となる事務兼オペレーションルームが設置させれており、そこを中心に上下に階段が伸び、奥行きも幅もたっぷりと取られたフロアが1階と3階へと続いていました。
オペレーションルームではチーフテクニシャンが受注管理や仕事の振り分け、電話連絡を行います。


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オペレーションルームから望むラボ内          中2階のオペレーションルーム
上下に広がるフロアが見渡せる


一人当たりの作業面積の広さにまず驚き、デザインのおしゃれさに感動しました。
広い空間で多くの机や機器があるにもかかわらず、隅々まで掃除が行き届きすっきりと整頓されている。
作業所というイメージが全く感じられず、テクニシャンの近くに寄るまでポーセレンを築盛していると気づかないくらいラボらしくない空間の美しさがありました。


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 総勢14名の見学者が入っても広々!           たっぷりとゆとりのある空間

広々としたフラットなデスクの上で作業が進んでいく。自費率が高い中で、ゆったりと仕事をしていくことができる。

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女性のセラミストも多い  

日本人の女性のスタッフもいらっしゃいました!(驚) 
ドイツの技工士学校に在学中の学生さんで、単身留学中とのこと。ラボにてアルバイトをしながら技工士学校で学んでいるとのことでした。ラボでは卒業を待たなくともテクニシャンとしていろいろな経験が出来るとの事だったので、卒業するころには臨床に即した仕事がすでに出来るようになっていますよね。とても良いシステムだと思います。彼女が卒業して、いずれは日本で技工をやりたいとの事だったので、将来的には日本にも女性のマイスターが誕生するかもしれませんね。とても楽しみです。

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WIELANDのCAD/CAMシステム                    かえる!?

壁にはこのようなカエルのコラージュだったり、セラミックのポスターなど審美的なものから遊び心満載のものまでかなりの数の展示物がかけてあります。壁を見ているだけでも歯科技工の歴史が学べるくらい、古いものをモチーフにしたものから最新の材料を使った技工物の資料など飽きることがありません。

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再製になった技工物達がガラスケースに飾られている 再製の技工物に添付される再製作報告書


こちらのラボでは自分の仕事が終われば、早い時間でも帰宅するのが一般的で、日本の技工所のように連日深夜まで。という風景はほとんど見られないという。
定時より早く来てその日の仕事を終わらせ、いつもより早く家路に着く。働くスタイルはある程度個人の自由が利くようです。
ラボで女性を多く見かけたのは家事育児と自分の仕事の両立を可能にしてくれる職場環境と家族の理解があるからではないかと思います。そういった社会がドイツにはあるんですね。


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ギャラリーのように歯科関連のポスターがズラリ       マイスターの認定書


さて、次にお伺いしたのは今回のドイツツアーに同行していただいた大畠一成氏のマイスタースクール時代のご学友で現在は姉妹ラボの提携を結んでおられるDieter Lingweiler氏が経営する”DENTHETIK LINGWEILER”です。

デュッセルドルフの中心から郊外に数十分車を走らせ、到着したところは大きな家が立ち並ぶ閑静な住宅地でした。
静かで美しい町並みにふさわしく、3名のスタッフでゆったりした雰囲気の中で仕事をされているなぁと思いきや、
この週はケルンでのIDSに合わせて、仕事量を減らしている(臨時休業?)とのことでした。
また、私たちが訪問するということでコーヒーやミネラルウォーターにサンドイッチとランチを用意していただいていた!生ハムが美味しく感激!

玄関を入りすぐに目に飛び込んできたのは・・・ユニットですよブルーのユニット!こちらにはシェードテイテイク用の部屋が設けられており、患者様に直接ラボへ歯の色を見せに来ていただいているとのことです。ライトやPCなども設置されておりシェードテイク&カウンセリングという感じの部屋になっておりました。

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シェードテイキングルーム


このような形式を実現させていることは非常に驚きでした。
患者様が自分の歯の為に、わざわざ歯科医院とは別にラボに足を運ぶという意識の高さとラボの自信とこだわり、本当に良いものを提供するために患者様、ドクター、テクニシャンの3者が協力関係を築いていく。
そんな理想を実現させた環境がここにはありました。

しかし、ドイツでもこの形式は当たり前ではないそうです。立地条件やドクターと患者様の双方の合意が必要なことなども含め、患者様が来社しやすい条件がそろってないとやはり実現は難しいようです。


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Hint-Elsのスキャニングマシーン  最高級といわれるCAM装置こちらもHint-Els


地下に降りると、Hint-Elsの大きなセミオートマチックCAM装置が目に飛び込んできました。オペレーションは1階のラボで行い、切削は地下のスペースで行うようになっていました。エラーが発生すると1階に設置された『警報ランプ』が赤く点滅するように工夫されていました。

地下は埃が入りにくいので、主に石膏を扱う作業やキャスト作業をするスペースとして1階とは全く違った内装になっています。
こちらも作業効率が上がるような工夫がいくつもされていました。

一通りラボ内の見学が終わったあと、プロジェクターを使用してLingweiler氏にドイツの技工業界におけるCAD/CAMシステムの現状とマテリアルについての説明を、大畠氏にはラボの構造設備基準について両者とも具体的な数値の入った資料を写しながら、プレゼンをしていただいた。

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左:Lingweiler氏 右:大畠氏 こちらにも日本人女性のスタッフがいらっしゃいました!
今回通訳をしていただいたSHO-KOさんです。(右端)


本来なら、デンタルショーやシンポジウムなどの講演でしか見聞きすることができない内容を非常に近い距離で学べたことは貴重な体験となった。また帰国後には『今後のCAD/CAM事業に役立つように』とデータをわざわざメールで送って頂いた。

メールには夕食をご一緒させていただいたレストランでのハプニングの思い出がつづられていました。
Lingweiler氏は日本語のひらがなを勉強中であり、夕食の席で隣に座った私のファーストネームを見事ひらがなで書いてくださいました!!それからしばし『かきかたクイズ』の時間を楽しませていただきました。

大畠氏から機会があるごとに少しずつ日本語の書き方を教わっているとの事でした。

私も次回お会いできたときにはいろいろなことを話せるように、もっと英語とドイツ語を勉強しなくてはいけませんね。これはIDSでも痛感しました。
(Lingweiler氏は英語もぺらぺらでしたので、私の理解しやすい英語で話しかけてくださったんですね~優しい方でした)

普段は本当に気さくで、仕事に対しては厳しく、真摯な姿勢をくずさないマイスターの姿がとても印象的でした。


ナノジルコニアのベルザ


     

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2007年07月17日 【レポート

ドイツ研修 Vol.1 マイスタースクール見学編

3月に行われたケルンのIDS2007に合わせて、ドイツのデュッセルドルフ&ケルンに研修に行ってきました。

今回はマイスタースクール&マイスターラボ見学~ケルンIDS~歯科医院見学という内容で7日間の旅でした。

Vol.1では、めったに公開することのないドイツのマイスタースクールでの授業風景やマイスターラボの仕事風景を写真を多めでご紹介していきたいと思います☆

3月17日土曜日のお昼前に成田を発ち、途中フランクフルトで乗り換えデュッセルドルフに到着したのは同日夜。神奈川の自宅からデュッセルドルフまで、その移動時間はなんと20時間以上!!

ドイツ初体験の私にとってこの旅行を振り返っても後にも先にも一番の困難がこの移動時間でした(涙)

さて、降り立ったデュッセルドルフは寒さこそ日本よりも厳しいところでしたが、乾燥しているので空気は非常に澄んでいて個人的には過ごしやすい気候でした。花粉飛んでないことにビックリでした。これはいいです。


それでは、ここより一般公開をなかなか許すことのないマイスタースクールの様子をご紹介します。
今回研修旅行を企画していただいたパナソニックデンタルさんのご尽力により遂にマイスタースクールにて見学及びお話をたくさん伺うことができました。”日本人初一般公開”の快挙です。

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デュッセルドルフのマイスタースクールの正面玄関


入学するのにも一定の条件を満たさなくてはならず、卒業までには1800時間もの課程をクリアしなくてはマイスター試験を受験することもできない。

全日コースのカリキュラムの内容といえば、1年間に130の試験を受けマイスター試験では5種類のアタッチメントを組み入れた補綴物を製作する。
ドイツ語はもちろんだが、科目によってはラテン語での授業もあり技工専門科目のほかに財務や経営学、経済学、法律学などの一般教養、職業教育(技工を教える勉強)の科目などがある。

技工専門分野+一般教養+学生養成の実技と日本の専門学校では考えられないくらいの履修課程である。マイスター試験は一生のうち3回しか受験することができない。

今回の旅にも団長として同行していただいた、大畠一成氏は日本人で始めて技工のマイスター称号を獲得した方ですが、ドイツ語、ラテン語と言語の壁を越えてさらに、上記のタイトな課程をクリアすることは想像を絶する努力をされたのだと思います。

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マイスタースクールの学生の方の卒業試験の実際の作品

EPSN0079_edited.jpg     EPSN0068_edited.JPG        マイスター学校の授業風景                女性も多数

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マイスタースクールのCAD/CAMシステム        ミュージアムのようなロビー

ドイツのでは幼いうちから、将来自分が何の職業に就きたいかということを意識し、学業を選択していく制度になっている。若いうちから職業意識が非常に高いのは、国の制度も大きく影響しているといえる。

日常の業務を通じて”職業意識”が日本の技工業界だけでなく、社会全体の若年層に必要だと痛烈に感じます。

私個人の意見としては、学校は規定の単位とレベルに達する為の努力をしない学生を卒業させるべきではないと思いますし、ましてや国家資格取得のハードルは高い位置で保たれなくては業界全体の水準を下げることにつながります。

今回のドイツマイスター学校見学は、日本の業界の育成制度だけでなく、個人レベルでは、”なぜ、この仕事をしているのか?何を創りだしたいのか?”を改めて問われる機会となりました。


ナノジルコニアのベルザ


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